ケニア入国に際し、ビザの代わりに電子渡航認証(eTA:Electronic Travel Authorization)の申請・支払いが必要となりました(約32.5USD)。

シミエン国立公園横断レポート(再掲)

アフリカの屋根という別名を持つエチオピア。標高もさながら人々の気位の高さも天下一品。雨季の終わりに訪れた世界遺産の山々の美しさは今でも瞬間的に思い出せるほど印象に残りました。(初出2013年)。

登山手続きとスカウト.

0909_dbark7150年前まで首都が置かれていたゴンダールはエチオピア観光の目玉のひとつですが、登山が目的の我々は遺跡観光もほどほどに100キロ離れた町、デバルクへ向かいました。この町のホテルで登山手続きとスカウト(道中で必須となる銃を持ったガードマン)を雇います。山中にポーターはおらず、代わりにラバ(ロバと馬の1代雑種で頑健)に荷物を運ばせます。ちょうどエチオピアの大晦日にあたる日だったので青空市場は賑わいを見せていました。

アフリカで最高.

IMG_2411初日は標高3,260メートルに建つ快適なロッジへ車で乗り付けただけで終了となります。入口の看板には「アフリカ最高高度に建つロッジ」と書いてあり異論はありません。高度順応のために午後はロッジの周辺をハイキングしましたが雨が降ってきたので中止。夜は室内で毛布を二枚がけしても寒いくらい冷え込みました。

二日目 3,250m.

IMG_2404いよいよ9日間の登山サファリのスタートです。人間は8時に出発しますが荷物はマイクロバスに乗せられて次の宿営地へ運ばれます。というのも登山ルートの大半は車で通行可能だからです。今回は雨季の終わりにあたり一面の緑がとても美しかったのですが、乾季の到来とともに全て茶色の世界に変わってしまうはずです。キャンプ場のあるサンカバルには2時半に着きました。

持ち物.

IXY37ここで装備について。手配会社の無知により夏用テントで寝ることになり寒さには苦しめられました。寝袋だけは日本から厚めのものを持参することをお勧めします。各キャンプ場にはキッチン(写真奥)とトイレが必ずあり、同行するコックさんが質量ともに十分すぎるほどの食事を出してくれました。靴はハイカットの登山靴がいいでしょう。スキー用のストックが2本あると坂道を歩きやすいです。これはゴンダールでレンタルもできます。

三日目 3,600m.

IMG_2682卵焼きを食べてから8時に出発。ルートは変化に富んでいて、国立公園から出たり戻ったり、また荷台に乗客を詰め込んだトラック(いすゞと呼ばれている)の通る車道を歩いたりします。コックさんの仕事は大変そうでした。朝食後にランチを調理して、それを見習いコックに担がせて登山客に同行させます。移動こそラバの背に揺られはしますが、次のキャンプに到着したら夕食の準備に取りかかるのですから。おかげで温かい昼食を常にとることができました。

IMG_27342時半頃、丘の向こうにギーチェ村が見えてきました。やはりこの辺りも人が普通に住んでいて、僕らは生活道路を大げさなチームを組みながら歩いているだけなんだと気づかされます。村人に断って村を通り抜けさせてもらうとキャンプ場はすぐそこでした。今日からこのギーチェに2連泊して高度に体を慣らしていきます。

山中での出会い.

b_buck11登山中でも大型哺乳類によく出会うのでサファリ好きにも満足のゆく旅となります。例えば一泊目のキャンプ地で見かけたこのブッシュバックはケニアのそれよりも大きくて首の下の白い模様が特徴です。角は雄でも大きくならないそうです。ガイドブックではパウエル種とかアビシニアン種という別種として扱われています。あと近くの岩場でクリップスプリンガーも見かけました。

ibex5自慢の角は1メートルに達することもあるというこの美しいヤギの名はワリア・アイベックス。エチオピアの固有種です。BBCのドキュメンタリーで知っていたので探し続けること数日、やっと5日目の山腹で見かけました。120キロになるという体は普通の山羊よりもがっしりしていて毛深く、おひげはかなり立派でした。以前は全国で見られたそうですが乱獲により激減し、今では北部の世界遺産に指定された公園内でひっそり暮らすだけだそうです。

gelada95ライオンのようなたてがみを持つこの大型猿の名はゲラダヒヒ。昼間は草原に座り込んで草をついばんで過ごし、夕方になるとヒョウによる襲撃を避けるために切り立った崖の斜面に引き上げます。座っていてはお尻が見えないので代わりに胸のあたりが真っ赤に染まるように進化したそうです。200頭を超える群れを作ることもあり、社会様式はサルの仲間で最も複雑だそうです。

birds126この翼長2メートルを超えるハゲワシの仲間を見たいなら2,500mを超える山に登るほかありません。羊を食らうというドイツ語がそのまま名前になっているこの鳥、ラマーガイアーは山羊などの骨を上空から岩に叩きつけて割り、中の骨髄を食べるという賢さを併せ持ちます。その姿は空の皇帝にふさわしいものでした。