アフリカで最も美しい捕食者であるリカオンにはどこに行っても会えないことが続き、その哀しみを「観測できないものは存在しない」という表現を借りることで癒して来た私ですが、今回ようやく事実と向き合う勇気を得ました。
絶滅危惧種.
まずリカオンの希少性を国際的ないわゆるレッドリストで調べると絶滅危惧とされています。これはライオンよりも、また見にくい、見にくいと連呼されるヒョウよりも一段階まずいレベルにあります。同じウェブサイトの数年前のデータにはなりますが現存個体数はわずか6,600頭だとか。アフリカの捕食者としては桁違いに多い一腹あたりの出産数(6から16)にも関わらず短い寿命やジステンパーなどの病気のせいで今でも個体数は横ばい、あるいはもっと減ってしまったと考えるほうが妥当です。オランダにある動物園がリカオンに敬意を表するのも無理ありません。
いるいる詐欺(1).
別の本によるとリカオンの群れの行動範囲は最大で1,500平方キロメートルに及ぶとか。つまりケニアのマサイマラ全部を提供してもひとつの群れしか養えないことになります。それでは3時間のサファリ中に出会えるわけないですよね。2014年に訪れたセルーはリカオンの主要な生息地とされていますが、面積5万平方キロもあるので二泊したのですが当然会えませんでした。
いるいる詐欺(2).
ケニア山の西方に広がる民間保護区、例えばレワやロイサバもリカオンがいる、いるって宣伝しています。でも2013年に訪れてその保護区に毎日繰り出しているドライバーさんに聞いてみると先週から目撃情報は途絶えている、などと言われました。「いる」と「見られる」の間の差は大地溝帯よりも大きいのだとこの時思いましたね。
サファリパークで予習.
自然下で会えないのであれば、せめて実物の元気な姿をサファリパークでもいいから目にしたいと思って出かけたのがヨハネスブルグ郊外にある「ライオン&サファリパーク」。車のガラス越しにも関わらず彼らのスレンダーな身体、犬よりも長い四肢、白黒茶の三色で彩られた美しい体色に私の心はすっかり奪われました。なので施設の出口で売っていた三千円のリカオンのぬいぐるみを拒否する理由はありませんでした。今ではナイロビの居間でくつろいで頂いています。
Was there on 2017-06-10