ライオンの保護に取り組むNGOが毎年八月十日をライオンズデーと称して様々な活動を行っています。有料チャンネルのナショジオでもその日は朝から晩までこのアフリカ最大のネコ科動物についての番組を流していました。この機会に私も末席に連なり、ガイド中に聞かれることの多い質問を解説つきで紹介します。
ライオンも爪を研ぎますか?
ネコの最大の武器である前肢の爪は強度を保つ為に定期的に「研ぐ」必要があるようです。自宅で猫を飼っている人なら床に落ちた三日月形をした古い爪のカケラを拾ったことがあるはず。私がタンザニアのセルーで遭遇したメスも一心不乱でした。指の間にフェロモンの分泌腺は無いので縄張りを示す役割は無いとする研究者がいる一方、常に同じ木で研ぐ個体もいるらしいので真実は不明です。
求愛のパターンは?
ライオンの社会では血縁関係のある複数の雌から構成されるグループが基本単位となります。なのでサファリ中にカップルを見かけた場合、彼らは「非日常」を過ごしている途中だと考えてください。マサイマラで出会ったこのペアは観察中に交尾を一度しましたが、要した時間は本に書いてある平均21秒より短かったです。
大きさに違いはあれども外見がみんな類似しているネコ科のメンバーは繁殖行動にも共通点が見られます。まず妊娠の準備ができている雌が誘い、雄が背後から乗ります。柔道の寝技のように動きを奪うためなのか、雄は首筋に噛み付きます。交尾後にはどのネコ類でも雌が仰向けになってしばらくごろごろ寝転がる様子が見られます。ライオンの場合はこの動作が暴力性を帯びることがあり、雄が体を離す瞬間に雌に横っ面をひっぱたかれることもあります。
雄は怠け者ですか?
決してそんなことはありません。雄は二歳半から三歳になると家族から追われて自分だけで生き延びることを強いられます。つまり自ら獲物を追って仕留める能力はあるんです。現職のボスを追いやって他人の群れを乗っ取れる位の力がつく頃には体も大きいので緩慢に見えるだけです。一度、雌が追い詰めた体重200キロくらいのヌーをのそのそやってきた雄が一撃で倒したシーンに出会いました。
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